商学部3年 李 恩宰さん 2015.2 更新
Q:現在の学びと奨学金の使い道について
私は太田正孝教授のゼミに所属し、「国際マーケティングマネジメント」について学んでいます。具体的には、企業が海外進出する際に直面する文化的障壁や現地での圧力をマネジメントしながらビジネス活動を展開していくための戦略、課題等についての考察です。1、2年次に商学の基礎を幅広く学んでいく中で芽生えた「マーケティング」や「グローバル」というキーワードへの関心や、ゼミの担当教員である太田正孝教授への憧れなどから「国際マーケティングマネジメント」を学ぼうと決めました。
現在、太田ゼミで研究活動に打ち込む中で、奨学金の存在が大きな支えになっています。その理由の一つは、経済的な余裕を確保することで学業に集中できることです。
太田ゼミは「本ゼミ」と「サブゼミ」に分かれ、研究に費やす時間が少なくありません。本ゼミとは、教授の講義を受けたり、グループで文献研究に基づくプレゼンテーションを行ったりする通常のクラスです。この本ゼミを補完する形で国際ビジネスについて研究を行うサブゼミもあり、ゼミ生はとても忙しい日々を送っています。この環境において生活資金を稼ぐ必要に迫られず勉強に集中できるのは奨学金の支えがあるおかげです。
学業に取り組む上で直接的に奨学金に助けられていることもあります。例えば、サブゼミで発生する出費がその一つ。サブゼミでは3、4年生がチームを組んでビジネスコンテストに参加することがあります。2014年秋には『太田ゼミ×SAMSUNGビジネス・アイデアコンテスト』というSAMSUNG協賛のビジネスコンテストに参加しました。テーマは「若者に刺さる全く新しいスマホサービスの企画」。私たちは二つの画面を備えた従来とは異なる形状のスマートフォンを提案するべく、プレゼンテーション用に簡易なスマートフォンの試作品を用意しました。その材料費はゼミ生の負担するところとなり、私は奨学金から自己負担分を捻出しました。
選択科目で履修している「演劇と身体」という科目も同様です。この科目では課題のレポートを書くために学生が自己負担で演劇を鑑賞します。演劇のチケットは一公演、数千円ほどかかります。劇場に足を運ぶたび、奨学金の支えを強く実感しています。
Q:奨学金の重要性について
このように、奨学金は私の学生生活にとって欠かせない存在です。現在いただいている「陳維謙奨学金」のほかにも、入学してからの1年間はJASSO(独立行政法人日本学生支援機構)から奨学金をいただいていました。いずれも「自分が求める留学生活」を送るために不可欠だと考えたからです。
私は韓国では受けられない多様な学びや経験を求めて日本への留学を決意しました。高校2年生の修学旅行で日本を訪れたとき、当時在籍していた高校の姉妹校である名古屋市立名東高校で体験授業を受け、日本の学習環境に強く惹かれたことがきっかけです。日本に行ったら、平日は勉強に集中し、休日には趣味の映画・演劇鑑賞などを通して日本文化をたくさん吸収したいと考えていました。そのためには経済的な備えも欠かせません。そこで、進学先を選ぶ上で奨学金も重要な検討材料にしました。早稲田大学には外国人留学生向けの奨学金が豊富にあると知り、留学して学業に打ち込むのに相応しい環境だと感じました。
早稲田大学に来ている留学生の多くは、私と同様に目的意識をもって日本で学ぶことを選択したはずです。ところが、その思いを貫くことは簡単ではありません。経済的なハードルが留学生の気持ちを変えていってしまうのです。
例えば、私の母国は韓国ですが日本は韓国と比べて物価が高い。そのため特別ぜいたくな生活をしていなくても、たくさんお金を使っているように感じてしまいます。同様の感覚を抱いている留学生は少なくないでしょう。私の周りには、支援してくれる親の負担を減らしたいという思いで勉強よりアルバイトを頑張ってしまう留学生の友人もいます。彼らから「日本で勉強しているという実感があまりない」という言葉を耳にしたとき、非常に残念な気持ちになります。留学の目的は何だったのか、と思うことがあります。
個人的には、せっかく素晴らしい学習環境が用意されているのだから、アルバイトで生活費を稼ぐことに追われて学業が手につかなくなるくらいなら、奨学金をもらえるよう精いっぱい勉強を頑張るべきだと思います。奨学金があれば、アルバイトの必要性がなくなり、その時間を勉強に充てられる。さまざまな場所に行って日本文化をたくさん経験できる。毎日学食で食事ができて、食事中に日本人学生と話して日本語が上達する。奨学金をいただけることが勉強を頑張った証として実感でき、勉強に対する意欲がさらに向上する。奨学金を得られることで、学生生活が充実したものになるのです。
Q:寄付者への感謝の気持ち
留学生は入学後、留学先の言語や文化という大きな壁に直面します。私も入学当初、日本語がなかなか理解できず、友人との会話に非常に苦労しました。おそらく、陳維謙さんも学生時代に同様の経験をされたのではないでしょうか。やはり異国の文化には慣れるためには時間と経験の積み重ねが欠かせません。そこで陳さんは、自身の苦労された経験をもとに、後輩の留学生が1日も早く日本文化に慣れ、学業に集中出来る充実した学生生活を送れるよう、金銭的に支えようとしてくださったのだろうと想像しました。現在、奨学金をいただきながら充実した学生生活を送っている身として、心より感謝の気持ちをお伝えしたいです。本当にありがとうございます。
私自身が奨学金に支えられながら学生生活を送っていることもあり、将来、自分が社会的に成功することがあれば、早稲田大学へ寄付をし、自分が受けた恩をこれから学ぶ後輩たちにお返ししたいと思います。そのためには精いっぱい勉強を頑張って、社会で活躍できる人材になることが欠かせません。
現在は将来の夢に向かってゼミの論文執筆に注力しています。テーマは「コンテンツ産業のグローバル化」。この広い題材の中で、映画、特に「国際映画祭」に焦点を絞り、『東京国際映画祭』と『釜山映画祭』の比較などを通して、国際映画祭を運営する際の企画やマーケティング方式、ターゲッティングの在り方などについて考察していく予定です。将来的には、現在学んでいるマーケットマネジメントの知識を活かし、国際映画祭の企画や運営に携わりたい。拠点も韓国や日本にこだわらず、アジア全体を見据えて活動していきたいと考えています。留学生の支援を目的に寄付を続けてくださっている陳維謙さんのご家族の期待に応えるためにも、残された学生生活でこれまで以上に勉強を頑張り、夢の舞台で活躍できる人間に一歩でも近づく努力を続けたいと思います。
李 恩宰さんが採用された「陳維謙奨学金」の寄付者である陳英明様にもインタビューをさせていただきました。