陳 英明 様

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陳 英明(ちん えいめい)  
東和貿易株式会社代表取締役
早稲田大学稲志賛助員

 
1974年、東和貿易株式会社に入社後、1989年より代表取締役。早稲田大学稲志賛助員。
本学を永きにわたり、ご支援いただいた光輝賛助員 陳維謙様のご子息でもある。陳維謙様のご遺志を継がれたいとの思いから、ご尊父の名を冠した奨学金「陳維謙奨学金」創設者の一人としてご寄付をつづけられている。
2015.2更新
 

Q:陳さんと早稲田大学の接点を教えてください。

私の父、故陳維謙が早稲田大学の卒業生であり、光輝賛助員であったことです。まず私の父について簡単に紹介します。父は1922年台湾に生まれ、日本統治時代の1940年、進学を志して来日。早稲田大学専門部経営学科に入学し、終戦の年に卒業を迎えました。大学卒業後、日台間の農水産貿易を主要事業とする「東和貿易」を東京に設立。また、台湾では畜水産事業向け配合飼料の製造を行う「台栄産業」の創立に深く関わるなど、日台を中心に事業を起こした人物です。

父の65年に及ぶ日本での生活では、数多くの出会いがあり、その方々とのご縁のお蔭で事業が成功したのです。それゆえ、自身を支えてくれた人たちとの最初のつながりがうまれた早稲田大学には特別な思いを持って、母校への恩返しという意味も込め、晩年は寄付という形で大学を支援していました。また、父は母校への寄付と同時に、台湾から日本へ留学を志す人への相談にも乗るなど支援を惜しみませんでした。父が2009年に他界した後、母校や留学生に特別な思いを抱いている姿を身近に見て育ってきた私たちは、遺族として父の意志を受け継ごうと決意しました。こうした経緯で、商学部に在籍する各国からの留学生の経済支援を目的とした「陳維謙奨学金」を設立しました。

 

Q:陳さんご自身は寄付に対してどのような考えをお持ちですか?

父の意志を継ぎ、私も継続して行きたいと考えています。「陳維謙奨学金」は2013年から支給が始まり、寄付者と奨学生の懇談会※には第一回の奨学生もいらっしゃいました。その学生は中国上海出身の女性で、非常に明るく、利発な学生でした。「私の家庭は特に裕福ではないため、生活費は自分で稼ぐ必要がありました。ただ、アルバイトは非常に大変だったので、奨学金をいただくことができて本当に助かっています」。彼女から直接いただいた感謝の言葉です。私は感激しました。懇談会では数名の奨学生によるスピーチがありましたが、奨学金を受給する前は本を買うのにも苦労していたという法学部の学生もいました。早稲田大学には私共の他にも、「指定寄付奨学金」という校友・父母・一般篤志家・教職員などからの寄付による多様な奨学金制度が約100種類ありますので、このことを他の在学生や早稲田を目指そうとする人たちに奨学生の皆さんがもっと広めていただきたいと願っています。


※「総長招待指定寄付奨学生の集い」は奨学金寄付をとおして早稲田大学を支援いただいている校友・篤志家の方々と、奨学生150名ほどが一堂に会し、寄付者様からの激励や、寄付者様への御礼、懇親などを通じ、交流を深めることを目的として、年に1回、12月に開催されている集い。

 

Q:「陳維謙奨学金」の奨学生に期待していることはありますか?

早稲田大学に集う数多くの優秀な学生の中から選ばれたことを誇りとし、早稲田大学で学んだことを活かして母国や国際社会で活躍されることを願っています。社会で役立つのは大学で身につける学問的な知識に限りません。むしろ早稲田という多様なバックボーン持つ人が集まる環境で築く人間関係こそ、グローバルな社会で大きな武器になるのではないでしょうか。私は父や自分の従兄弟を見て、そのように感じます。

その従兄弟とは台湾の大学を卒業後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科に留学生として進み、2年間国際経営を学んでMBAを取得しました。当時、アジア太平洋研究科には留学生が3割ほど在籍していたほか、さまざまな企業から派遣されて学ぶ、多様な人材が集う環境だったそうです。そこで培った人間関係は、その後の自身の社会生活において直接的、あるいは間接的に力になっていると聞きました。

近年、台湾からは学生に限らず企業からも若い人がどんどん早稲田大学に留学しています。彼らが帰国した後は、台湾の「稲門会」で世代を超えた交流を広げ、留学時にはなかった交流で貴重な人間関係を築いています。私は父の仕事を間近で見てきて、国際舞台で活躍するには人とのつながりを大切にしていくことが重要だと感じていましたが、世界的なグローバル社会に突入した昨今においても、それは変わらないと思います。数多くの人脈を築くことがグローバル社会での活躍に重要であるということ。留学生の皆さんには、この点を理解し、人とのつながりを大切にした学生生活を送っていただきたいと願っています。

 

Q:早稲田大学では新しい大学像となる「Waseda Vision 150」※を打ち出し、「グローバル人材の育成」など時代に合わせた戦略を掲げています。陳さんがこれからの早稲田大学に期待することがあれば教えてください。

やはり若い方には海外に出て異文化に触れるだけでなく、長所短所含めて外から自分の国を見てほしい。その経験が、後の人生の財産となるような大切な気づきを与えてくれます。そういう思いもあり、「早稲田への期待」というと大学のグローバル化に関する事柄を考えてしまいます。

早稲田大学は4,000人以上の外国人留学生が在籍するなど、国内で国際化が最も進んだ大学だと聞いています。これは非常に素晴らしいことです。これからも多様な人々が学ぶ魅力的な環境を創造していってほしいと願っています。

日本人学生の海外留学について、さらなる活性化を期待したい。以前、商学部の学部長にお会いしたとき、海外指定校での取得単位の一部は、帰国後、卒業に必要な単位として認定されるとうかがいました。その制度を拡充することで、日本人学生を海外に送り出す後押しになります。「Waseda Vision 150」には「卒業までにすべての日本人学生が外国へ留学等をする」という、日本人学生の国際化を促進する戦略が盛り込まれています。この取り組みは、インターンシップを含むさまざまな形態で海外経験を積めるところが素晴らしく、今後、制度を利用しやすく整備していくことで、学生が将来より自分に合った職業に出合える機会が増えていくことを期待しています。
 

※「Waseda Vision 150」は早稲田大学創立150周年(2032年)へ向けた大学の姿を示したビジョン。

http://www.waseda.jp/keiei/vision150/about/index.html

奨学生の声【陳維謙奨学金】

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李 恩宰(イ ウンジェ)さん
商学部 3年

 

李 恩宰さんのインタビューはこちら