福田 秋秀 様


福田 秋秀(ふくだ あきひで) 様
株式会社エフテック 取締役会長 
埼玉経済同友会特別幹事
早稲田大学校友会代表幹事/早稲田大学理事
早稲田大学維持員

愛媛県出身。1964年、早稲田大学商学部を卒業。株式会社エフテック取締役会長を務めるほか、埼玉経済同友会特別幹事など兼任する役職は多数。一方で、早稲田大学評議員(2002-現在)、早稲田大学校友会代表幹事(2008-現在)、早稲田大学理事(2008-現在)も兼務。

2007年には早稲田大学への継続的かつ多大な貢献が顕彰され、名誉称号「維持員」が贈呈された。また、創立125周年事業募金における多額の支援が讃えられ、創立125周年事業の一つとして建設された11号館の9階には、「福田秋秀記念教室」が設置されている。

2012年5月には、韓国高麗大学校より名誉経営学博士号が授与されている。
代表幹事を務める早稲田大学校友会は、母校への支援事業として、奨学金の意義と重要性を鑑みて幅広い奨学金事業を展開しており、また、早稲田大学の歴史と伝統を伝える寄付講座「早稲田を知る」も開講している。

2013.04更新

Q:在学中はどのような学生生活を送られていましたか。

 お金がなく、着たきり雀の典型的な早稲田マンでした。当時の私の一張羅は、高校時代に着ていた制服のボタンを変えただけの学生服でしたからね。ただ、私の場合は応援部に入部したという点で、他のみなさんとは少し違った学生生活だったかもしれません。私は1960年の入学なのですが、大学の構内は60年安保のデモに沸いており、私も自然な流れのなかで、デモに参加しました。早稲田から国会議事堂まで行くのですが、早稲田のデモは、他の過激なデモに比べ、非常に整然としていましたね。校旗を立て、校歌を歌いながらするデモに、私は強烈な印象を受け、校旗と校歌を管理している応援部の支援をしたいと思い、応援部に入ったのです。
 応援部は非常に練られている組織でした。たとえば、入部してもすぐには正式部員として認められません。出席率はどうか、進級できるか否か、そうした諸々の条件をパスした者だけが正式部員と認められ、部員バッジが渡されます。2年生で正式部員となり、3年生は準幹部、いわゆる中間管理職ですね。そして4年生が幹部です。ほかにも様々な役割分担や規則があり、それに則り、一つの組織が確立されていました。私は今、経営の役を果たしていますが、応援部の活動は経営ゼミナールを実践していたようなものだと今になって思います。
 もう一つ、学生時代の忘れられない出来事があります。それは、私が2年生のときに、当時のアメリカの大統領のジョン・F・ケネディの弟で、司法長官だったロバート・ケネディが早稲田大学を訪れたことです。早稲田の学生と対話をしたいということで、大隈講堂で対話集会が開かれました。その頃はまだ60年安保の延長線上にありましたから、学生を含めて、日本全体が反米です。そうした状況のなか、大隈講堂は超満員。スタートはしたものの、野次や怒号が飛び交い、演壇にかけ上がる学生もいたりして、大混乱の状態が30分ほど続きました。それを見かねた応援部の4年生が、校歌合唱を呼びかけたのです。そこにいたブラスバンドがメロディを出すと、不思議なことに、それまで騒然としていた会場が粛然としました。そして、学生全員が起立をして、校歌を歌い始めたのです。舞台の上にいるケネディ氏の隣に学生が並び、一緒に大合唱しました。これは、早稲田大学にとっても歴史の1ページだと思います。そして、その翌年に、ケネディ氏が再訪してくださいました。そのときは、前年と異なり、皆で温かくお迎えしたことを覚えています。


Q:理事として、校友会の代表幹事として、また維持員としても早稲田大学に多大なるご貢献を頂いていますが、早稲田大学へのご支援を始めるにあたっての経緯を教えてください。

 50歳になった頃に、大学の諸先輩方から「校友会活動に参加してみないか?」とのお誘いをいただいたのがきっかけです。はじめは「面白そうだな」くらいの気持ちで参加したのですが、とても熱心に活動をされている皆さんにお会いして、影響を受けました。「愛媛の田舎から上京し、早稲田に入り、多くのことを学ばせていただき、多くの友人もできた。でも、その母校に、まだ何も恩返しができていないな」と思ったのです。
 ちょうど、そのころ、私の経営地盤がある埼玉県の経済同友会の代表幹事をすることになり、そこで、渋沢栄一賞を出すことが決まりました。まずは渋沢栄一さんのことをよく知ろうと思い、埼玉県の深谷にある渋沢栄一さんの生家をお訪ねしたのです。すると早稲田大学の校賓であり、大きく貢献していることがわかりました。それで、「自分にできることはしなければいけないな」と思うようになりました。応援部の仲間、同級生、他の大学の応援部とのつながりなど、早稲田大学で得たものは、すべてが私の大切な宝物です。そう思えるようになったのは、自分が50歳を過ぎてからですね。だからこそ、恩返しをしたいとの気持ちが強くなったのだと思います。


Q:母校への支援を「恩返し」と表現されましたが、寄付に対してどのようなお考えをお持ちでしょうか。

 自分がそこに所属したことに対する誇りがなければできないことです。しかしながら日本は寄付文化そのものが未熟ですから、早稲田ブランドを今以上に確立させなければなりません。そして、在校生、OB・OG、またその家族の皆さんにも、早稲田大学とのつながりに誇りを持っていただき、寄付をしたくなるような仕組みをつくる必要があります。そのためには、いい学生を集め、いい組織を作ることが不可欠です。


Q:取締役会長を務めていらっしゃる株式会社エフテックでは、グローバルなビジネス展開をされていますが、そこにもやはり早稲田大学の精神が生きているのでしょうか。

 世界中のどの国のどの文化に対しても、大きな抵抗を感じずにやってこられたのは、早稲田大学で培われた「進取の精神」のおかげだと思います。また社是として、私どもは「Respecting People」 と「Challenging Spirit」を掲げています。人間尊重と挑戦の精神を大事にしています。こうした考え方は、学の独立や、民衆のための大学につながっていくと思われますので、私どもの社是も決して早稲田大学の精神と相反するものではないと考えます。


Q:創立150周年となる2032年の実現を目標とした早稲田大学の中長期計画「Waseda Vision 150」では、「早稲田を核とする新たなコミュニティの形成」が、経営戦略の一つに掲げられています。これについて、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

 グローバルな視点を持つことは、これからの時代に必要不可欠なことです。しかし、それと同時に、より地域に密着した形で早稲田精神を生かすにはどうするべきかを考えたところ、早稲田精神を持った人たちが、地域や職域など自分がいる場所でリーダー的存在になっていくことが最善策なのではないかとの結論に至りました。仏教用語に「一隅を照らす」との言葉がありますが、一隅を照らすことによって全体が照らされてくるのだと私は考えます。早稲田精神を持った人たちは、政治、経済、福祉など、実に多様な分野で活躍をされています。そうした人たちが、早稲田ファミリーとなり、次々と後輩たちが育ってくれることこそが、早稲田を核とするコミュニティの理想的な形であるように思います。


Q:日本のみならず世界に貢献し続ける早稲田大学として、担うべき役割とはどのようにお考えでしょうか。

 世界に貢献し続ける大学として大切なことは、早稲田大学そのものが「一隅を照らす」存在であり続けることです。そしてもう一つ、生命工学の分野に貢献していただきたい。生命はすべての根源です。社会学や哲学も大切かもしれませんが、生命と真正面から向き合い、取り組んでいくことが重要だと思われます。今の時代なら、医工連携という考え方も可能ですし、これからは生命工学の分野でも世界に貢献できる大学であってほしいと思います。


早稲田大学校友会の会員数は約59万人。その代表幹事をされている福田様から卒業生に対してのメッセージをお願いします。

 とにかく自分が早稲田大学の卒業生であるという誇りを持ってご活躍願いたい。そして、後輩をしっかりと支援していただきたい。端的に言えば奨学資金です。ぜひご寄付、ご貢献をしていただきたいと思います。優秀な学生を集めることは、早稲田大学の誇りにつながります。学業に優れているという意味だけではなく、信念や志を持っている優秀な学生を集めることが重要です。校友会の予算も半分は奨学資金などの母校支援に充てていますが、現状ではまだ不十分です。より多くの人たちに、意義を理解していただき、ご協力いただくためには、何らかの上手い仕組みが必要だと思います。たとえば、大学へ寄付をすると、その額の倍の法人税や所得税が免除される仕組みなどができるといいですね。 
 その一方で、奨学金を受けた本人が、そのことを名誉に感じるような仕掛けをすることも大切なことです。私も奨学金をいただいた身として、奨学金を受けた学生をきちんと組織して、校友会活動の中核にしていきたい考えです。そして、返さなくてもいい、その代わり、どんな分野でもいいからしっかりと貢献していただきたいというメッセージをきちんと伝えていくことが大切だと思っています。また、校友会としては、早稲田大学の中長期計画「Waseda Vision 150」の実現を最大限バックアップしていきたいと思います。直近では、2014年4月にオープン予定の「早稲田大学中野国際コミュニティプラザ」における「グローバルリーダー育成」事業に3億円の支援を決定しました。この支援は、同プラザの国際学生寮における寮生の経済的負担の低減と留学生や地方学生の入寮促進に活用される予定です。

 どれだけの時が過ぎても、早稲田大学は私にとっては心の故郷です。こんなに素晴らしい大学は他にありません。日本の国家的財産と言っても過言ではないくらいです。そんな早稲田大学を守っていくために、これからも一卒業生として、また校友会の代表幹事として、恩返しを続けていく所存です。そして、卒業生の皆様にも、母校への支援にぜひともご協力いただきたくお願いいたします。